
『建設業のAI活用事例を調べると、大手の施工管理システムばかりで自社に置き換えられない』 『現場は紙とLINEが中心で、どこからAIを足せばよいか分からない』
検索結果にはBIM(建物の3次元モデルに情報を持たせ、設計から施工まで共有する仕組み)との連携や大規模なデータ基盤の話が並び、数十人規模の建設会社が同じことをする場面は想像しにくいものです。一方で、日報、安全書類、協力会社への連絡文といった文章作業は、規模を問わず毎日の現場で発生しています。同じような悩みを抱える方も多いのではないでしょうか。
本記事では、作業の種類ごとに、生成AI(文章や要約を作るAI)が下書きできる範囲と、人が確認して確定する範囲を分けて解説します。事例を読んだあとに、自社のどの作業から試すかを決められる状態を目指します。
建設業のAI活用で先に見たいのは、現場の繰り返し作業
建設業のAI活用というと、施工管理システムの入れ替えや、設計データとの連携を思い浮かべる方が多いかもしれません。ただ、中小の建設会社にとって最初の一歩になるのは、そこではありません。まず見るべきなのは、毎日、毎週、同じ形で繰り返している文章作業です。
たとえば日報は、毎日ほぼ同じ構成で、書く内容だけが入れ替わります。安全書類、協力会社への連絡、図面の読み合わせメモも同じで、決まった枠の中身を現場ごとに書き換えています。こうした作業は、生成AIが下書きを作りやすい領域にあたります。大規模な施工管理の入れ替えを待たなくても、今ある記録の隣で試せるのが利点です。
結論として、建設業のAI活用は、大きなシステムの導入より先に、現場の繰り返し作業を見直すところから始められます。
大手の事例と、中小の現場で真似しやすい作業は違う
大手企業の事例は、独自に開発したシステムや、専門の部署があることを前提にしている場合が少なくありません。公開されている話をそのまま自社に当てはめようとすると、人員も予算も足りず、読んだだけで終わってしまいます。
中小の現場では、すでに使っている日報の書式、LINEのグループ、写真を入れているフォルダが、日々の情報の置き場になっています。そこに新しい仕組みを足すよりも、既存の記録の隣に、文章の下書きを作る工程を置くほうが始めやすいといえます。職長がメモを残し、その内容を文章に整え、担当者が確認して提出する、という流れであれば、現場のやり方を大きく変えずに済みます。
事例を読むときは、システムの名前ではなく、どの作業の下書きを担っているのかで分類してみてください。
建設業のAI活用事例|現場で分かれている4つの作業
ここからは、建設業の現場で繰り返されている作業を4つに分け、それぞれで生成AIが担える範囲を見ていきます。基本の考え方は共通で、AIは下書きを作り、人が確定します。現場の状況や安全に関わる判断は、現場を知る人にしか下せないためです。
まずは、4つの作業ごとに、AIが下書きできるものと、人が確定するものを一覧で確認してください。
| 作業 | AIが下書きできるもの | 人が確定するもの |
|---|---|---|
| 日報・作業報告 | 作業内容の文、翌日の予定文 | 人工(にんく。作業員の延べ人数を表す単位)、進捗、安全上の判断 |
| 安全書類・施工計画のたたき台 | 項目の並び、定型文の下書き | 現場条件に合わせた危険の有無 |
| LINE・チャットの連絡 | 指示文、写真に添える一言の下書き | 誰に、いつまでに、何を頼むか |
| 図面・仕様の読み合わせメモ | 疑問点のリスト、用語の言い換え | 図面と現場が一致しているか |
表の右の列に並ぶのは、いずれも現場の事実や責任に関わる判断です。AIの出力を最終版として扱わず、確定する担当を決めておくことが、4つの作業に共通する前提になります。以下で、それぞれの使い方を具体的に見ていきます。
日報・作業報告の下書き
日報は、毎日書く文章の代表です。職長が口頭やメモで残した「今日やったこと」を、報告文の形に整える使い方があります。箇条書きの断片を、読み手に伝わる文章へ並べ替えたり、翌日の予定を一文にまとめたりする作業は、生成AIが得意とするところです。
注意したいのは、人数、天候、進捗といった数字や事実の部分です。これらは現場の記録が正であり、AIが整えた文章をそのまま提出することは避けてください。AIが言い回しを整える過程で、メモにない内容が補われてしまう場合もあるため、提出前に元のメモと照らし合わせる習慣が必要です。
日報の下書きは、書く人の負担を減らす目的で使い、記録の正確さを担保する役割は人に残す、という分担が基本になります。
安全書類・施工計画のたたき台
安全書類や施工計画書は、過去に作った書類を参考にしながら、現場ごとに書き換えて作る場合が多いものです。過去の書類の項目を並べ替えたり、定型の文章を下書きしたりする工程には、生成AIが向いています。
一方で、その現場に固有の危険有害要因が抜けていないかは、AIが補ってくれるものではありません。労働安全衛生に関わる内容は、現場の条件を知る人が確認し、必要な項目を追記する前提で使う必要があります。AIが出した下書きは、あくまで確認の出発点です。
この使い方で期待できるのは、白紙から書き始めなくてよくなることに限られます。書類作成にかかる時間の短縮を約束するものではなく、現場の確認作業そのものを省くものでもありません。
LINEやチャットの連絡文
LINEなどのチャットを、現場との連絡手段にしている建設会社は多くあります。ここでは、写真とセットで送る「何が終わり、次は何か」を短くまとめた文面の下書きに使えます。簡潔な指示文や、写真に添える一言を整える程度でも、書く側の手間は軽くなります。
ただし、協力会社への依頼は、送信前に担当者が宛先と期限を確認してください。誰に、いつまでに、何を頼むのかを決めるのは人の役割です。文面が丁寧に整っていても、宛先や日付が違えば、現場に混乱を生みます。
また、協力会社の個人の連絡先や、未公表の現場情報を、AIに貼り付けて試すことは避けてください。連絡文の練習には、固有名詞を伏せたサンプル文を使うのが安全です。
図面・仕様メモの整理
図面や仕様書の読み合わせでは、会議のなかで疑問点が次々に出てきます。そのメモを、あとから箇条書きの疑問リストに戻したり、専門用語を発注者や新人に伝わる言い方に言い換えたりする用途に、生成AIが使えます。
数量や納まり(部材どうしが取り合う部分の収まり具合)の判断は、図面と現物が正です。AIが整理した文章を根拠に、寸法や数量を決めてはいけません。ここで取り上げているのは、あくまで読み合わせで出た疑問を整理する作業であり、積算そのものをAIに任せる使い方ではありません。
疑問点を漏れなく書き出し、誰に確認するかを明確にする。その手前の整理にAIを使うと考えると、役割が分かりやすくなります。
もし、現場のどの作業から試すかを決めきれない場合は、ぜひHiroshimAIにご相談ください。AI顧問では、繰り返し作業の洗い出しから、AIで下書きできる範囲と人が確定する範囲の整理まで、ご提案が可能です。AI顧問にシステム開発の作業は含まれず、開発が必要になった場合は、別途お見積りのうえ受託開発として切り分けます。気になる方は、ぜひ一度ご相談ください。
事例を自社に置き換えるときの見方
4つの作業を見ても、自社でどれを試せばよいかは、会社ごとに違います。事例記事をいくつも読むうちに、気になる使い方が増えてしまい、結局どれも始められない、という状態もよくあります。そこで、事例を自社に置き換えるときの見方を整理しておきます。
基本は、自社の1週間の作業を思い浮かべ、そこから1つだけ選ぶことです。選ぶ基準は、毎週発生していて、すでに文章にしている作業であるかどうかです。条件に合う作業を絞れれば、試したあとの変化も見やすくなります。
写真とメモがすでに残っている作業から選ぶ
新しいセンサーや専用のアプリを用意しなくても試せる作業を、優先してください。たとえば、職長のメモや工事写真がすでに残っている日報や報告書は、材料がそろっているため、下書きを試すまでの準備が少なく済みます。
材料がない作業を選ぶと、まず記録の取り方を変える必要があり、AIを試す前に現場の負担が増えてしまいます。現場の協力も得にくくなるでしょう。
ツールを新しく設けるより、今ある記録の隣に、下書きの工程を置く。この順番で考えると、試す作業を選びやすくなります。
効果は時間のパーセントではなく、直しの回数で見る
削減時間の割合といった数字は、対象や条件をそろえないと、自社には当てはめにくいものです。そのため、この記事では百分率を使わず、別の見方を提案します。
見るポイントは2つあります。AIの下書きに対して、人が直した箇所が減ってきたかを見ること、そして、提出前に確認していた項目が整理されて減ったかを見ることです。直しの回数や確認項目は、現場で数えやすく、改善の手応えも分かりやすい指標といえます。
試す前に、何を数えるのかを決めておくと、続けるかどうかの判断がしやすくなります。
建設業でAI活用事例を試す前に決めておくこと
試す作業が決まったら、実際に始める前に、社内で決めておきたいことが2つあります。1つは、AIに入力してよい情報の範囲です。もう1つは、下書きを作る人と、内容を確定する人の分担です。
この2つを決めないまま始めると、現場が「何を入れてよいのか分からない」と手を止めたり、AIの文章がそのまま提出されてしまったりします。どちらも、事例を読んだだけでは見落としやすい部分です。大がかりな規程は必要ありませんが、最初に短く決めておくことで、試す作業が進めやすくなります。
入力してよい情報の範囲
図面、原価に関わる情報、協力会社の個人情報、未発表の施主名は、社外の生成AIに貼らないと決めておいてください。入力した内容を学習に使うかどうかは、サービスごとの利用規約や設定で決まります。確認できるまでは、貼らない運用にしましょう。
社内にまだルールがない場合は、実際の情報ではなく、サンプルの文章で試すところから始めるとよいでしょう。日報なら、日付や現場名を伏せた架空の内容で、文章の整え方を確かめられます。入力してよい情報と禁止する情報を、短い一覧にまとめておくだけでも、現場は迷いにくくなります。
下書きと確定を分ける担当
文章を生成する人と、現場の判断を承認する人は、同じにしないほうが確認が残ります。同じ人が両方を担うと、AIの文章をそのまま通してしまいやすいためです。
たとえば、日報の下書きは職長が作り、内容の確認と提出は現場代理人が行う、といった分け方が考えられます。担当を分けておけば、あとから誰がどこを確認したのかも追えます。
試す作業を選んだあと、どの順番で社内に広げればよいかがわからない方は、下記の記事でも詳しく解説をしています。気になる方はぜひ一度下記の記事をご覧ください。
まとめ|建設業のAI活用は、日報と連絡文から見る
建設業のAI活用事例は、大手の大規模なシステムだけではありません。日報、安全書類、LINEなどの連絡文、図面の読み合わせメモという4つの作業は、中小の現場でも想像しやすく、今ある記録の隣で試せるものです。いずれの作業でも、AIは下書きを作り、現場の事実と責任に関わる部分は人が確定します。
まずは、4つの作業のうち、自社で毎週発生しているものを1つ選んでください。その作業で、入力してよい情報の範囲と、下書きと確定の担当を決めれば、小さく試す準備は整います。
導入を支援する会社の選び方がわからない方は、下記の記事でも詳しく解説をしています。気になる方はぜひ一度下記の記事をご覧ください。
現場の作業から、AI活用を相談したい方へ HiroshimAI株式会社は広島を拠点に、業務の整理から現場への定着まで、企業のAI導入を支援しています。
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